「かくかくしかじか」「岡崎に捧ぐ」など 漫画家の自伝的マンガは全部面白い。今回は1冊完結の名作を紹介します。
「こどものあそび」南Q太
映画化もされた「さようならみどりちゃん」の作者南Q太の自伝的漫画。「私の娘、Yに捧ぐ」で始まる。作者の幼少期から漫画家のアシスタント期までをその時々のエピソードを交えて描いた1冊完結の自伝マンガ。描かれるのはその時々に出会った人たちとの人間臭いエピソード。癖のある登場人物たちのなかを主人公である作者は飄々と駆け抜けていきます。ラストシーン。自分の人生を振り返りながら子供に語り掛けるシーンは何度読んでもじわりとくる。
引越しは10回した。
バイトは20コ以上。
恋人は18人目。
何かを手に入れたり、なくしたり、遊びながら、大きくなったよ、お母さん。

「遠浅の部屋」大橋裕之
プロボクサーになると宣言して実家を出るも漫画家になたくなり、形だけボクシングジムに通いながら漫画を描くというねじれた時期を書いた自伝漫画。何者でもないフリーターとして日常をおくりながら早く漫画で賞をとって今の生活を抜け出したいと願う主人公が、今の絵柄の原型をつくり出し編集者の目にとまるも、編集者とのやりとりに嫌気がさし漫画家になるのを辞めて実家に戻るまでの話。夏の炎天下の下、漫画家を辞めることを決意する場面では、主人公のこれまの人生におけるマンガと関わったエピソードが走馬灯のように描かれる。そのエピソードどれもがキレイでも感動的でもなく微妙なものばかりなのに読み終わるとグッとくる。映画のキッズリターンを情けなくしたようなラストがまた良い。
アパートに帰ってから上野さんに電話で「ダメ出しに耐えられないので辞めます」と伝えた
電話の最後に「大橋くんはマジメだね」と言われた
マジメって何だろう
よくわからなかった
そのまま実家に電話して
漫画のことを全部話した
実家に戻ることに決めた

「僕の小規模な失敗」福満しげゆき
「僕の小規模な生活」で有名な作者の高校時代から結婚するまでを描いた自伝的漫画。「僕の小規模な生活」にも通じる作者の心の声が面白い。ネガティブで決して社交的とはいえない作者ではるが意外と行動的でそこから小さなドラマが生まれる。奥様との出会い、そして不思議な関係を経ての結婚に至るも、漫画ではまだ芽が出ず。。というところで終わるが、その後の活躍はご存じの通り。
まともに考えれば たしかに生活能力もないような僕といるより・・・
彼女は実家に帰ったほうがいいにちがいない・・・
・・・でも僕は・・・
彼女をはなさない・・・
僕のために‼

どの本も自信をもって人に勧められる私のオールタイムベスト級の本ばかりです。人生のモラトリアム期を思い返しながら、今もまだ心にあるあの頃の自分に向き合いながら読んでみてください。
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